大規模修繕工事Large scale repair work

マンション大規模修繕工事

大規模修繕工事とは、年数の経過によって劣化したマンションの外観や設備を定期的に修繕し、建物の機能を維持することです。
大規模修繕工事の対象となるのは、主にマンションの共用部分です。たとえば、躯体・タイルの補修やシーリング打ち替え、外壁・鉄部の塗装、防水工事などを実施します。
マンションによって何年ごとに行うかは異なりますが、一般的に13 年~ 15 年周期で行われます。大規模修繕工事は工事期間が長く、費用も高額になるため計画性をもって行うことが重要です。

仮設工事

共通・直接仮設工事は、現場作業を安全かつ円滑に進めるために、全ての工種に必要な仮設事務所や休憩所等の設置及び作業に必要不可欠な外部足場の設置する工事のことを指します。工事着工後、まず初めに共通仮設工事を実施し、その後足場組立工事を行いまして、工事竣工前に撤去されるものになりますが、工事の規模に関わらず、どの現場においても欠かせない工事です。たとえば、現場に手洗い場や仮設トイレがないと作業員が工事を中断し公共トイレ設置場所まで借りに行かなければなりません。その場合作業効率が下がり、時間ロスにより工事費用が膨れてしまう場合があります。また、外部足場設置などの仮設を行うことで現場の安全性や作業効率を大幅に向上させることができます。仮設工事は大きく分けて「共通仮設工事」と「直接仮設工事」の2 種類に分けられます。

共通仮設工事

工事全般に関わり現場をスムーズに進めるために必要な仮設物を設置する工事です。具体的には現場事務所、作業員休憩所、手洗い場、資材置き場などの設置を行います。

直接仮設工事

各工種に直接関わる外部足場等を設置する工事です。外部足場は主に外壁での高所で作業する場合に設置する作業床で、建物形状や状況に応じて「枠組足場」「クサビ式緊結足場」「単管足場」「移動昇降式足場」「吊り足場」「ゴンドラ足場」の6 種類から安全に作業できる足場を選定し設置します。また、メッシュシート養生を行い、工事で発生する粉塵やほこり、塗料などが足場の外に飛散しないよう建物全体を覆います。足場の仮設工事は、災害防止、飛散防止、作業員の安全確保を行うことが重要です。

躯体補修工事

躯体補修工事はマンションの構造を支える外壁下地コンクリート面や、その内部の鉄筋に生じた劣化を補修し、建物の安全性と耐久性を維持するために大切な工程です。まず下地調査を行い外壁や下地の不具合を調査し、補修が必要な箇所を算出します。そして、調査結果をもとに躯体補修工事を行います。この工程が不完全だと、雨漏りの原因となるだけでなく、建物自体の寿命を縮めることにつながるため大変重要な工程になります。
下地の補修には「ひび割れ補修」「欠損・爆裂部補修」「脆弱塗膜補修」「タイル補修」などがあり、劣化症状によって適切な工法を選択します。

ひび割れ補修

ひび割れは経年劣化や地震などの影響によって発生します。ひび割れの挙動の有無やひび割れの大きさによって工法を選定します。代表的な工法として、擦り込み工法、樹脂注入工法、Uカットシール材充填工法が挙げられます。

欠損・爆裂部補修

欠損とはコンクリートの物理的な欠けや割れのことを指し、地震などの物理的な衝撃や凍害によって発生します。対して爆裂とは、内部の鉄筋が錆びて膨張することで表面のコンクリートを押し出す現象のことです。どちらも工法としてはモルタル充填工法が選択されますが、爆裂の場合には劣化部分をはつり落とし、鉄筋を防錆処理した後樹脂モルタルを充填します。

脆弱塗膜補修

脆弱塗膜とは主に天井部分が水分や経年によって劣化し、塗装が部分的に浮いたり剥がれたりしたものを指します。そのままにしておくと、ポロポロと剥がれ落ち劣化範囲が広がる恐れがあるため、上階の防水工事も併せて補修を行います。 塗膜の脆弱部を完全に除去し、カチオン系ポリマーセメントモルタル等を用いて、コテで平らに均します。

タイル補修

タイル補修は経年による剥落等を防止する極めて重要な工事になります。タイル補修を行わないと剥落したタイルによって大きな災害につながる可能性が非常に高い為です。
まず専門の調査員による打診・目視調査を行います。不具合箇所へはマーキングを行い、不具合箇所を図面に記載していきます。
補修方法は大きく分けて張替え工法と樹脂注入工法の2つになります。ひび割れや剥落の恐れが高い場合は現状のタイルを剥がし、新たにタイルを張替えるタイル張替工法が選定されます。また、浮き面積が小さく剥落等の恐れが低い場所は接着剤を注入し、アンカーピンにて固定する樹脂注入工法が選択されます。

シーリング工事

シーリング( コーキング) とは、外壁のつなぎ目や窓・扉の枠廻りに見られるゴムのような部分のことです。シーリング工事は、固まるとゴム状になるガムのような材料を隙間に埋める工事で、建物の防水性を高めたり、地震などの衝撃から建物を守ったりする役目があります。新しいシーリング材は柔らかく伸縮性がありますが、経年劣化や紫外線などによってだんだんと硬直しひび割れや剥がれが起こります。シーリングが劣化していると、防水性が低下して漏水のリスクが高くなってしまうため、古いシーリング材を撤去し、新しいシーリング材を充填する工事が必要です。

シーリング打ち替え工事

打ち替え工事は、既存のシーリング材を全て撤去した後に、新しくシーリング材を充填する工事のことです。

洗浄工事

洗浄工事は専用の機械や薬剤を使用して外壁をきれいに洗い流す工事です。
外壁や屋上は常に自然環境にさらされているため、多くの汚れが蓄積しています。汚れが付着していると美観が損なわれるだけでなく、カビ・苔・錆などが発生し建物の劣化に繋がります。さらに、汚れが付着した状態で塗装工事や防水工事を行うと、塗料が外壁になじまず剥がれや膨れなどの現象が起きる可能性があります。そのため、洗浄工事は大規模修繕工事において仕上がりを左右する工程です。
施工箇所としては、外壁や屋上、バルコニーの床面、天井などがあり、外部のいたるところを洗浄します。洗浄工事は主に「高圧洗浄」と「薬品洗浄」の2 つの方法を同時に行います。

高圧洗浄

高圧洗浄は業務用の「高圧洗浄機」を使って、外壁や屋上・建物内部の廊下・階段・バルコニー床面・天井などの洗浄を行います。バルコニーなど洗浄を行う箇所によって、居住者様や洗濯物に外壁洗浄の汚水が飛散しないよう注意看板の掲示や洗濯物干しの制限をさせていただいております。

薬剤洗浄

タイル面は主に高圧洗浄と薬品による洗浄を併せて行います。タイルの種類によっては、薬剤の選択を誤るとタイルの持つ質感が損なわれる場合もあるため、事前に試験施工を行います。

外壁塗装工事

塗装工事は、劣化により塗装の剥がれや退色がみられる箇所を塗り直す工事のことです。
外壁および鉄部の塗装が剥がれてしまうと、雨水などによって躯体であるコンクリートに劣化が生じます。こうした劣化箇所を塗装し直すことにより、見た目も耐久性も回復・向上させることができます。
大規模修繕工事における塗装工事とは主に外壁塗装と鉄部塗装の2種類です。塗装工事では定着力の弱った古い塗料の上から新しい塗料を重ねても、古い塗料の剥落とともに新しい塗料も剥落してしまいます。そのため、塗料を塗り直す際は、古い塗料が既定の定着力を保っているか検査を行う必要があります。また、天候の影響を受けやすい作業でもあり、低温多湿や雨が降っているような状況では、塗料の付着力が低下してしまうことや、十分に乾燥せず美しい仕上がりにならないといった不具合が起こる場合があります。大幅に工期を延長しないためにも、現場では天候を常に確認しながら作業を進めていきます。

外壁塗装

外壁塗装では、既存塗膜と下塗り材がしっかりと付着しているかを確認し、問題がなければ上塗りを行います。また、塗布量が不足している場合は再度塗装を行います。

鉄部塗装

まずは鉄部の錆や汚れを落とすケレン清掃を行います。次に錆止めを塗布し上塗りを行います。鉄部塗装の塗料は乾きが早く、塗りムラが出やすい性質があるため、職人の塗装技術が求められます。

防水工事

防水工事は、マンション・ビルといった大型建築物から戸建てまで様々な建築物で行われ、水の侵入による建物の劣化を防ぐことを最大の目的として行います。年数の経過とともに建物にひび割れや傷みが発生し、そこから水が内部に入り込んでくることがあります。そのような場合に防水工事が必要となるのです。施工箇所としては、水の侵入源となる屋上、屋根、ベランダ、バルコニー、外壁などがあります。状況に応じて工法を選定しますが、屋上防水で代表的な「アスファルト防水」と「塩ビシート機械的固定工法」、バルコニーや共用廊下で代表的な「ウレタン塗膜防水」と「シート防水」の計4 工法についてご紹介いたします。

アスファルト防水

合成繊維不織布と呼ばれるタイプのシートにアスファルトを浸透させて、防水材としての役割を加えた状態で防水箇所に敷き詰める工事です。アスファルト防水にもトーチ工法や冷工法など複数の工法があり、状態や修繕の目的を考慮して選定します。

塩ビシート機械的固定工法

屋上の床面に複数の器具を取り付け、そこに塩ビシートを固定( 溶着) していくものです。屋上床面と塩ビシートの間に空間が出来ることで湿気を逃がしやすいといったメリットがあります。その反面、取り付け器具の固定強度を確認し十分な強度を確保することが重要になってきます。

ウレタン塗膜防水

液状の樹脂を塗装し、それが硬化することで出来た膜によって防水する方法です。
複雑な形状の部分に対しても施工しやすいという特徴があり、庇の上部や階段、バルコニー、共用廊下など建物の様々な場所で使われています。

シート防水

塩化ビニールでできた防滑シートを接着剤で貼り付けて行う複合防水方法です。
バルコニーや共用廊下、階段に多く用いられます。床シートはシート同士につなぎ目があるため、そこから剥がれたり水が侵入したりしてしまわないように、しっかりと溶接処理をする必要があります。

建築関連工事

隔て板ボード交換

マンションやアパートなど集合住宅のベランダやバルコニーにある、隣の部屋との境にある板のことを「隔て板」と言います。隔て板は、そのサイズや素材が何でも良いわけではなく、さらに建築基準法や消防法によって決められた方法で設置しなければなりません。

隔て板はプライバシー確保のためでもあり、ある程度頑丈に作られています。災害時には居住者様自身で蹴破って隣戸へ避難をすることになっていますが、台風の強風や飛来物などで壊れてしまうケースもあります。

隔て板ボード交換作業は、フレームの取外しを行い、その後新しい板を設置してから塗装での色合わせという流れになります。その場合、フレームの取外しと復旧で半日、塗装で2日かかり、合計3日間かかってしまうのが通常です。そこで弊社では、事前調査で板の塗装色を確認し、色を合わせて塗装した物を現地で加工して取り付ける方法で施工させていただいております。
そうすることにより、本来3日かかってしまうところを現地での作業時間は半日程度に抑えることが可能です。バルコニー内での作業になりますので、居住者様には作業中ご在宅いただく必要がありますが、弊社のご提案する方法は、ご在宅いただく日数を最小限にして行えることから、大変ご好評をいただいております。

駐車場ライン引き(白線引き)

マンションやアパートの駐車場にある白いラインや番号は、一般的な塗料ではなく専用の材料が用いられていることが多いです。車の往来や日光・雨など、駐車場のラインは意外と過酷な環境にさらされているため、消えたりはがれたりしてしまうことがあります。ラインや番号が見えなくなってしまうと、どこに車を停めたらいいか分からなくなりトラブルにもなりかねませんので、しっかりと修繕する必要があります。

工事内容としましては、まず既存の剥がれかけている白線の撤去を行います。次に、施工予定箇所に土や藻、苔などがあれば掃除します。その後、ラインをまっすぐ引くための墨出しを行ってからラインを引いていきます。塗布後乾燥するまで数時間かかりますので、その間の往来の際には、居住者様にもご注意いただく必要があります。

風除室フロアヒンジ交換

そもそも「風除室」とは何かというと、マンションのオートロックの集合玄関機がある場所のことです。風除室は一般的に、屋外の熱や冷気が中に入ってくることを防ぎ、屋内の室温を維持するためにあります。「フロアヒンジ」は、扉の軸側にあたる床に埋め込まれている装置で、扉が適切なスピードで開閉するように制御する役割をもちます。

扉が閉まるのが極端に速くなった、変な音がする、オイルが漏れてきた、開閉の際に扉がうまく動かないなどの症状が出てきたときは、フロアヒンジが劣化している可能性があるため交換が必要となります。交換作業の手順としましては、ガラス扉を一旦取り外し、フロアヒンジ本体およびその下のセメントケースを取り出して交換します。その後再度ガラス扉を設置し、新しいプレートを取り付けて終了です。フロアヒンジの寿命は大体10 年程度といわれています。

足場解体

足場解体は、工事終了後すぐ行うのではなく、社内検査、管理者検査、発注者様の検査を終えて承認を得てから行います。また、居住者様にアンケートを配布し工事の仕上がりを見ていただき不具合があった場合は是正を行います。全ての検査終了後、足場の解体は上階から下階へ順番に行います。足場の解体作業が開始される際は、足場周辺の通行規制などを行い安全を確保し作業をいたします。解体作業と並行して、足場を支えていた「壁つなぎ」の撤去と撤去して空いた穴を塞ぐ作業も行います。足場の工事中は大きな事故につながりやすいため、手順をしっかり守っているか、危険な体勢で作業していないかなど注意が必要です。取り外した部材はしっかりと固定して地上にいる作業員に受け渡し、部材を種類ごとにまとめてトラックで搬出します。解体工事中は、居住者様・通行人と作業員が接触しないよう作業場所の区画や誘導員を配置し、事故のないように進めていくことが重要です。

アフター点検

アフターメンテナンスとは施工会社が自主的に行う【術後検診】のことです。
工事期間中にきちんと品質を管理したつもりでも、潜在化している不具合は見つけることが出来ない場合もあります。そういった不具合を見つけ修復し、お客様に安心していただくことが重要です。
物件ごとに時期は異なりますが、点検は竣工後1・2・5・10 年目に行い、対応漏れがないよう各点検年数のアフターメンテナンススケジュールをあらかじめ作成して実施いたします。
流れとしては、日程のご提案→管理組合様などの日程の確定→各戸アンケート配布( 点検1年目)→管理組合様立ち会いのもと共用部の確認→点検実施報告書のご提出→補修工事の実施→補修工事実施報告書のご提出、という流れで行います。
施工箇所によって保証範囲や保証期間も異なりますが、例として塗装箇所の剥離や発錆は2年間、屋上やルーフバルコニーの防水施工箇所の漏水は10 年間の保証期間を設けております。